今月の3連休は、撮影の仕事だった。最終日にふらふらと、夕刻の銀座の人混みに紛れに行った。仕事後の気分転換には、雑踏の中の孤独が一番なのである。
見上げると、東急プラザがそびえ立っている。中に入ると、人々が集まり、歓声が聞こえてくる一角がある。近づいて行くと、カメラが何台も居並び、今まさに、「ギネス世界記録に挑戦! 紙飛行機スローイングチャレンジ」というイベントが宴たけなわであった。
このチャレンジは、紙飛行機をふわりと飛ばして、3メートル先に置かれた直径30センチのバケツの中に、1分間で何機着陸させられるかを競うものだった。
もし5機以上入れることができたら、最上位の記録がギネスブックに登録されるという。予選を勝ち抜いた男女5人の横には、A4の白い紙を折って作られた、ギネス仕様の同型の紙飛行機の束が置かれている。
注視していると、最初はふわっと優雅にスローイングしていた人でも、残り30秒! の声が掛かると、様子が一変。まるで手裏剣でも投げるかのように、矢継ぎ早に飛行機をバケツに向かって放るのだった。
その結果は、3機止まり。5機以上という認定基準に届いた人はいなかった。
初挑戦だったという男性が「39年間生きてきて、自分にこんな才能があることに、全く気づきませんでした」とコメントすると、会場から笑いが起きた。
時あたかも冬期オリンピック真っ盛り。スキーのジャンプ競技では、まるで同じ人間とは思えないほど研ぎ澄まされた鳥人間たちが、悠々と空を飛んでいる。よりによってそんな時期に、こんなに牧歌的なチャレンジが行われるなんて……。
紙飛行機の軌道を見ていると、時間が非常に長く感じられた。その時、会場にいたオリンピックに行けなかった普通の人たち皆の心が、ふんわりと宙に飛んだのかもしれない。
=2018年2月23日掲載=