行列は、女子トイレの花である。
しかし、そうも言っていられない事態が進行中だ。
昨日も、仕事で下車した大崎駅のトイレに、10人ほどの行列ができていた。
ははぁ~と思ったわたしは、スルスルと行列の角をすり抜けて、中へ入って行った。
けっして、せっぱつまっていたわけでも、横入りしようとしたわけでもない。長い行列にピン!と来たからである。
列の先頭に出て個室を確認すると、案の定、和式のドアが2つ、開いている。中は空っぽなのである。
先頭の女性が「和式なら空いてますよ。お先にどうぞ」と声を掛けてくれた。
うにゃ、ありがとうございます。では、皆さんにと後ろを振り向き「和式なら空いてますよ~」と少し大きな声を張り上げた。
通常こういった場合、たいていの人は、首を振るかうつむいて目を反らす。だが、昨日は言葉で答えてくれた人が、2人もいた。
「膝が痛くてしゃがめないの…」と恥ずかしそうに言う白髪の女性と、「わたしは洋式しか使えません」とつぶやく女子学生である。
そういうことならとニッコリして、わたしはそそくさ進み出た。
そのタイミングで「設計した人、わかってるの?和式に入る人なんて、今時いないのにね」と、後方の2人が、怒りをぶちまけた。
使用後、手を洗いながら鏡をのぞくと、行列は変わらず、和式のドアはやはり2つ、開いたままである。
少子高齢化や、生活習慣の変化するスピードに、世の中のハードが追いつかない。似たような事態はこれからも増えて行くのだろう。
改札口に向かう目の端に、列の最後尾に並ぶ人の姿が見えた。
彼女に「和式に、空室アリ」という伝言ゲームは、届いたかしら?
そんなことが、気になった。
=2013年10月22日掲載=