平日の午前中、行きつけのスーパーマーケットで買いだめをしていると、目の端を何かがピャーっと移動した。スピードの速い小動物みたいな残像である。
今の何?
ざわめく心で買い物を続けていると、見つけた!スクールジャージ姿の中学生らしき3人が、店内に生息し、ちょこまか動き回っている。
見ていると、一度陳列した小麦粉を回収しに走ったり、店員さんをバックヤードまで追い掛けたり、やたら動きが多い感じ。
「何してんの?」と声を掛けると、「職場体験です。授業で」と澄まし顔。
別の日、自動車のディーラーに行くと、小さなつなぎが用意されている。聞くと、週末に子ども向けの「一日メカニック体験」を行うそうで、お店をあげて、準備に余念がない。
なるほど、最近は「キャリア教育」という言葉をよく聞く。人生を切り拓くには、早期の職業体験が必要だという考え方。
そういえば、江東区の豊洲にある「キッザニア」は90種類以上の仕事が選べると人気。千葉県の幕張にある「カンドゥー」も、親子連れでにぎわっている。
そんな昨今の体験ブームを観察していると、大人たちが「ね、うれしいでしょ?」「なってみたいでしょ?」と先走りをして、子どもたちに次々と体験を畳み掛けているように見えなくもないのだが、うがちすぎか。
大人は、何だかんだいって、体験が大好きなのだ。先日も、50代の友人が「大人の夢体験」とかいうツアーに参加して、海女さんになってウニを採った!と目を輝かせていたっけ。
さて、来夏の参議院選挙から、選挙権が18歳以上に引き下げられる。まさかこれも、子どもを喜ばせようとして大人がお膳立てした「大人体験イベント」ではありませんよね?
=2015年12月15日掲載=