6月25日(日本時間)は、大谷翔平選手も所属する米国メジャーリーグ、エンゼルスのファンにとって、夢見心地な1日となった。敵地コロラドのロッキーズ戦で25対1の大勝利を収めたのである。
打線に火がついたのは、2対0で迎えた3回。トラウト、ドゥルーリー、サイスが3者連続ホームラン。しかもたった3球、電光石火のミラクルショー。さらに同じ回、期待の若手モニアックも2ランホーマーをかっ飛ばし、打者16人の猛攻で13点!
続く4回も、フレッチャーの3ランホーマーなどで8点を追加。6、8回にも1点ずつ加えて合計25点。まるでラグビーみたいな得点だが、野球である。甲子園の地区予選みたいだが、メジャーリーグである。
そもそも、標高1600mの高地に位置するクアーズ・フィールドは、他球場に比べて10%増しの飛距離が出るといわれている。ありがとう、薄い空気!
歴史的大爆発を果たしたエンゼルスは、この時点で42勝36敗。こりゃ今年こそ、ポストシーズンに行けんじゃない?と、誰もが思った。もちろんわたしも。
だが、世の中には「まさか」という坂がある。6月の終わりからスーパースターのトラウト、ドゥルーリー、レンドーンら主力打者が次々に怪我で離脱。おまけにトラウトの代わりに昇格してきたアデルも故障。ついに大谷の爪まで割れてしまった。あれよあれよという間に今までの貯金を食いつくし、45勝46敗で前半戦が終了。
もしあの日の25点を小分けにして、負け試合に使うことができたら……と、いじましいことさえ考える。
標高の高い観覧席にパコーン、パコーンと吸い込まれていった美しい白球の残像が、今となってはただむなしい。だがエンゼルスは、その気になりさえすれば25点取れるチームなのだ。
「やればできる子」を信じて見守る、親心。
=2023年7月14日掲載=