ある日、自宅の郵便ポストにコストコのチラシが手差しされていた。
コストコとは、アメリカ発の会員制スーパーで、店舗がだだっ広い倉庫であることや、商品が大容量であることなどで知られる。日本上陸からすでに20年弱。東北では、宮城県富谷市と山形県上山市に倉庫店があるようだ。
さて、そのチラシには、1日招待券がついていた。
今まで、周りの友人がどんどん入会する中で、会員制なんて嫌な感じ! と、かたくなに背を向けていたわたしだが、なぜかその日だけは、招待券が輝いて見えて、千葉県の幕張店に向かって車を走らせた。
だが現地で、この券で買い物はできないといわれてしまう。え、見るだけ?
嘘でしょと、勢いで会員に。まあ、魔が差したのである。
会員証を手にすると、重量級のカートを押して、いそいそと日用品のフロアーへ。ハンドソープが4リットル!トイレットペーパーは30ロール入り!と、噂通りのビッグサイズがお手頃価格で山積みされている。
食品フロアーに移動すると、赤身のビーフの塊がドカドカ置かれていたり、見た目よりもずっと安い鶏の大きな丸焼きが整然と並んでいたり。
友人が、いつも3家族で来てシェアするといっていたが、確かにこのボリュームは日本人には身に余るよねと、もっぱら見て回る。
そのうちに、オーガニック野菜などを少しずつ自分でも、カートにイン。
1時間ほど歩き回り、レジに到着。行列を作る人のカートを覗くと、ほぼ全員が、てんこ盛りである。
ふと、これは買い物ではなく狩猟なんだなと思った。
普段は慎ましく暮らしている農耕民族においても、時々狩猟に出掛けて大量の獲物を得ることを、きっと本能が求めているのだ。
そんなことを考えていたら、誰もが皆、鳥打ち帽を被ったハンターのように見えてきたから不思議である。
=2018年2月9日掲載=