子どもの頃、ふくしまの野山を駆け回って育ったわたしが、突然、花粉アレルギーに襲われたのは、五年前のことである。
昨年は、関東でも花粉の飛散量が多かった。今年は油断していたが、三月も半ばを過ぎてから、いきなり爆発的な症状に見舞われた。くしゃみを百回連発しても、まだ止まらない。
ある日、あまりの辛さに、とある病院に駆けこんだ。ちまたで噂の注射治療(減感作療法)に頼ろうとしたのである。 だが窓口で、効果が出るまで時間がかかるので、今年はもう無理、また来てねと、言われてしまった。時すでに遅しだ。
もちろん、この五年間、薬も試した。よく効いて眠くならないと勧められた処方薬は、片っ端から体験済み。だが、体質なのか、どうしても睡魔にあらがえない。半分に割って飲んでも、猛烈に眠い。しぜんに薬を遠ざけるようになっていた。
止まらないくしゃみをしながら、ふと、思った。半分で眠くなるなら、そのまた半分ではどうだろう?
これが当たった。かじって飲みこんだ四分の一の錠剤の力で、くしゃみが止まった。おまけに眠くない。
そうか。半分でダメなら、そのまた半分、また半分……。わたしたちのゴールは遠いけれど、半分ずつ寄せていくのだ。
どれも人間のすることである。ゴールは存在している。消えてなくなることはない。
=2012年4月19日掲載=