今でもたまに「コピーライターってどんな仕事?」などと聞かれることがある。
そんな時は、「呼ばれたら行く。芸者さんみたいな仕事よ」と、答える。あながちウソではない。
わたしがフリーになった20数年前は、広告会社から電話で呼び出されると、いつもオジサン数人が、会議室という名のお座敷で、雁首(がんくび)揃えて待ち構えていた。
紅一点といえば、まだ聞こえはいいが、せめて舐められないように!と、背の低いわたしは、ヒールの高い靴ばかり履いていた。
足の親指の異変に気付いたのは、10年程前だったか。痛みに耐えかね、専門の病院に駆け込むと、病名は外反母趾(ぼし)。ボコッと外に飛び出した親指の付け根は治りませんと、特注の中敷きを処方された。
その中敷きをハイヒールに詰め込みながら、我慢するしかないわけねと、すっかりあきらめモード…。
ところが、昨年ランニングを開始したのをきっかけに、仕事用の靴をローヒールに変えた。さらに、気功を習うと、思いがけず足の指が息を吹き返し始めた。
靴の中で、常にキュッと縮こまり、かじかんでいた5指が、1本ずつ自由に動かせるようになったのだ。
さらにある日のこと。思い付いて、乗っていた自転車のペダルに土踏まずを押し付けてみると、まさかの「立ちこぎ」ができた!(って超私的な話だが、誰もがいとも簡単にやってのける「立ちこぎ」が、わたしはできなくなっていた。)
専門医からさじを投げられた外反母趾。だが、靴の中で、ドレミ~と指でエア・ピアノを弾きながら、「ひょっとしたら、このまま治っちゃうんじゃない?」
外反母趾は、キャリアガールの勲章だという人もいる。だが、そ知らぬ顔して返上したい。誠にありがたくない勲章である。
=2017年12月22日掲載=