湘南、藤沢の駅前ビル2階に、被災3県の支援ショップがある。販売員5人全員が福島からの避難者で、イベント時は、中庭にもたくさんのテントが出てにぎわうという。
だが、そのお店もあさって閉店。今月、神奈川県の補助金が打ち切りになる。
先週、行ってみると、昭和の面影を残すビルは入り口がわかりにくく、「3月20日閉店」の張り紙を目印にたどりついた。
学校で話題にでもなったのか。お前どれ買うよ?とウロウロ歩く男子高校生集団がいる。レジ前で常連らしいお客さんが談笑している。わたしも福島の地酒、川俣シャモカレー、はちみつ飴などをカゴに入れる。
暗く狭い店内だが、2年7ヵ月の間、支援を続けたこの街の温かさがある。
だがわたしも含めて、支払いは小銭ばかり。古めかしい階段を降りながら、ギアチェンジの時期?と、思わずにはいられなかった。
話は変わるが、昨年の8月、東電は、資産整理の一環として、銀座支店本館の売却を発表した。
売却価は、235億円。売却先は、かの原発の父、正力松太郎がかつて社長を務めた読売新聞社である。
同社は近隣のプランタン銀座やマロニエゲートも所有。女性やトレンドを意識した、活気のある界隈だ。
ここに立て替えられるビルの店先に、いわきのミニトマトがキラキラ並び、郡山の御前人参のキッシュや、会津の柿乗せパンケーキに長蛇の行列ができる光景を、ついつい夢見てしまう。
いま福島で生まれ始めた起業家たちには、臆する事なく、旬な戦場へ打って出てほしいと心から願う。
人の善意が集めるお金だけでは、復興のエネルギーには、足りないからである。
=2014年3月18日掲載=