大手町の駅ナカに人だかりができていた。横目で覗くと、ビジネスマン・フェアと書いてある。
飾られていたマネキンが身につけていたのは、昔ながらのビジネスバッグではなくて、スーツに似合うビジネスリュック。
ははぁ〜たしかに、今どきは通勤の電車の中でも、このようなカバンを背負っている人をよく見かける。両手が自由になるし、身体へのバランスもいい。悪くない流行だと思ってはいたが、こうして大手町でも、大手を振って公認されていたのね! 今や、背中にリュックこそがビジネスマンの王道というわけか。
振り返ってみると、昭和のビジネスマンの定番は、片手で下げるかばんやブリーフケースだった。中には、ジェラルミン製のアタッシュケースで、かっこよく決めている人もいた。
そう、あの頃は、背中にカバンを背負っているのは、ランドセルの小学生くらいのものだった。
そのフェアをさらに見回してみると、スマホケースは並んでいるが、腕時計が見当たらなかった。30年前は、社会人なら腕時計がまず常識。それが今では、時間を見るのはスマホで十分というわけだ。
このフェアを覗いて感じたのは、これが社会人の身だしなみとか、必須のマナーだといわれていることも、実は移ろいやすい、その時々の当たり前にすぎないってこと。
だとしたら、その時代にしか通用しないユニフォームを躍起になってコピーするのは、いささか滑稽なことなのかもしれない。
みんなが気負わずに、自分に合った物を身につけ、それを自然に認め合えるのが、きっとだれもが自立した世の中なのだろう。
=2022年6月10日掲載=