先週金曜日の午後、JR山手線・外回りの電車に乗っていた。田町を過ぎて「そろそろ、品川か」と腰を浮かせかけると「次は、高輪ゲートウェイ」というアナウンス。そうか、そんな駅があったのよね。
幸い品川での打ち合わせまでしばらく時間がある。空気椅子になったわたしは、なぜかそのまま立ち上がり、降りたことのない駅にストンと下車してしまった。
昨年3月に開業してから1年以上たつ。なのに、近くの車両で下車したのは、わたし一人。テント屋根の巨大空間が、うら寂しい。
その時、ふとオーバーラップしたのが無観客オリンピック。うら寂しさでいえばこらちだって負けてない。直前になって、福島のあづま球場や新国立競技場で観戦する楽しみがバッサリ消えた。ポッカリ開いた心の穴は、予想以上に大きい。
エスカレーターを上がり、無人改札前のスペースでキョロキョロしていると、頭上にガラス張りのカフェが見えた。案内看板によると、いったん改札を出る動線のようだ。灼熱の駅前には、高層ビル工事の巨大な穴が暗くポッカリ開いていた。
思えば、この駅が一躍注目を集めたのは、3年前の新駅名発表の時である。派手に公募までしておいて130番目だった名前を選んだことや、選ばれた名前のチャラさや、珍妙な長さが、激しい批判にさらされた。
それでも、TOKYO2020では、パブリックビューイングの会場になることが決まっていた。もしあのままコロナ禍がなければ、世界中から集まった人たちに「高輪ゲートウェイ、最高!」などと言われて盛り上がったかも……。ネーミングで外したこの駅にも、再浮上のチャンスがめぐってきたのかもしれない。
さて今日は、1年延期された東京五輪の開会式。無観客を逆手に取った、リベンジの扉(ゲートウェイ)は開かれるだろうか。
=2021年7月23日掲載=