先々週の月曜日、スマホでツイッターを眺めていると、郡山市のキャラ「がくとくん」が、ぽつねんと湖畔に立って、雪山を見つめている画像が目に止まった。
この風景は、湖南町からの猪苗代湖に違いない。
横の文面には「たぶんこのロケーション! 月9「いつ恋」第5話は今夜9時放送〜」と書いてある。
へぇ、今夜、ふくしまでロケしたドラマが放映されるんだ! 気になったわたしは、久しぶりに「月9」にチャンネルを合わせた。
フジテレビ・月曜・9時台のこの枠は、トレンディードラマ全盛期に一世を風靡(ふうび)したが、最近では、のぞき見する事さえなくなっていた。
その日は第1部の最終話だったようで、ふくしま出身の練(れん)が、同じ運送屋に勤める同郷の先輩に、1日だけ休暇を!と、懇願するシーンがあった。
最初は、土下座して見せろとそっけない先輩だったが、二人の会話が「ソースカツ丼、酪王カフェオレ、ままどおる…」と、食の連想ゲームのようになるにつれ、「ずるいなぁ、おまえだけ。勝手にしろ。帰れ、帰れ!」と言い放つ。言葉は乱暴だが、男臭い優しさが味になっている。
ドラマは、高速バスで会津に着いた練がとぼとぼと湖畔まで歩き、雪の磐梯山を見つめる、「がくとくん」おすすめのシーンで、しっかり盛り上がり、見ているこちらもほっとした。
里帰りには、やはり、すべてを受け入れてくれる、毅然とした「山」が必要なのである。
さて、その日以来、忘れ掛けていた、酪王カフェオレの味の記憶を、頭と舌が思い切り追憶している。
ふくしまのものというだけで、今まで普通と思っていたものが、突然、何か特別な存在に姿を変える。
久しぶりの「月9」を見て、不思議な気持ちになったのだった。
=2016年3月1日掲載=