朝の通勤中、吊り革に揺られながらラジオを聞いているとこんなニュースが。
『いないいないばあ』という絵本が日本の絵本ではじめて累計出版部数700万部を突破したという。
作者は松谷みよ子さん。初版は1967年。ということは、53年もの間、愛されてきたわけだ。あの有名な『ぐりとぐら』が533万部、『はらぺこあおむし』が420万部らしいから、これはもう断トツのトップである。
ふむ、その絵本なら、昔ウチにもあったなぁと、絵を担当した瀬川康男さんが描いたおどけたクマの顔の表紙が目に浮かんできた。
その話題の流れで、「いないいないばあ」は英語では「ピーカーブー」になるんですよね〜と、アナウンサーが話した。当然「いないいない」が「ピーカー」で「ばあ」が「ブー」なのだろうと思って聞いていたら、どうやら違うらしい。
英語では、おおっていた両手を顔から離すタイミングで、まとめて「ピーカーブー!」と叫ぶとのこと。納得がいかないが、言語のリズムの違いだろうか。
でも、純ジャパ的立場でいわせてもらえば、「いないいないばあ」というあやし技は、「いないいない」と顔を隠して赤ちゃんを思い切り不安にさせておき、最後に「ばあ!」が来ることが肝なのではないか。不安から安心へ。いわばアメとムチ。お芝居の原点ともいえるハラハラドキドキからカタルシスへとつなぐ演出が、赤ちゃんをケラケラ笑わせるのではなかろうか。知らんけど…(これ、最近の流行語デス)。
さて夜、家に帰って探してみると、本棚の一番奥の隅っこに息を殺すようにこの本がまだ存在していて、驚いてしまった。汚れて、ページの端は無惨にすり切れたまま。
700万冊の『いないいないばあ』には、赤ちゃんを笑顔にしたいという大人たちの切なる願いがこもっている。その願いを束にして、もっともっと赤ちゃんがよく笑う国にしていけるといいんだけど……。
=2020年12月11日掲載=