みなさんもちょいちょい目にしているだろう。鮮やかなオレンジ色のケシの花。国道の中央分離帯や、線路脇のフェンス下の常連だ。
この花をわたしが、関東地方の自宅近くではじめて見たのは、20年ほど前のこと。駅前に借りていた駐車場の隅っこに、ふわふわ揺れて咲いていた。
可憐な姿に心を奪われて、家のベランダに移植したいなぁと思った。それを友人のM子に話すと「何のんきなこと言ってるの?」とイラつかれた。
「ソイツは、タチの悪い帰化植物よ。千切って捨てた方がいいよ」と一刀両断。
だが、M子のアドバイスはスルーされ、わたしはその後も心のなかで、こっそりお気に入りにしてきた。
今朝も、ランニングの途中の道端で見かけたので、改めて調べてみた。花の名前は、ナガミヒナゲシ。原産地は地中海沿岸。なるほど、真っ青な地中海を背にして、揺れるオレンジ色のヒナゲシか、絵になる。♪オッカの上、ヒナゲシの花に〜♪などと、思わず鼻歌が出て、我ながら失笑。
何かに付いて運ばれて来たのだろう。日本での発見は1961年。まずは温かな西日本へ。その後、関東、東北へと陣地を広げ、温暖化の今では、北海道にまで分布しているらしい。
繁殖力が凄まじく、1つのケシ坊主から1600個もの種(ケシ粒)をまき散らす。驚いたことに、根っこからは、周りの植物の成長を阻害する毒を出しているという。実は危険なテロリストでもあるのだ。
そんなにワルだと、既存の生態系にかなり影響を与えたよね。ハコベやスギナ、おなじみの雑草はもちろん、比較的最近、江戸時代以降の帰化植物であるオオイヌノフグリやシロツメクサたちも、打ち負かされてきたに違いない。
上陸してから約半世紀。
いつかこの花のように、今、世界中で猛威を振るっている殺人ウィルスも、わたしたちと平和に共存してくれる日が来るのであろうか。
=2020年4月24日掲載=