都内によくあるカフェ、プロント。先月末、この店のメニューから、「スイカジュース」が消えた。
長かった夏も、ついにおしまい。そろそろ越冬の準備をしなさいということか。
そういえば今年の夏は、始まりもスイカだった。
千葉県で開かれた「富里スイカロードレース」は「給水所」の替わりに置かれた「給スイカ所」でスイカが食べ放題になるのが有名。
近年人気が沸騰して、3km、5km、10km、それぞれのレースへの参加は抽選。無類のスイカ好きのわたしも、ダメ元で申し込み、念願のレースデビューを果たしたのだった。
ところが、初心者の悲しさで、持ちタイムの順に並ぶルールを知らない。スタートラインはどこ? と前方をウロウロしている間に号砲が鳴って、走り出したものの、前後左右のランナーが驚くほど速い。足手まといになってはと、猛スピードで皆の流れに乗った。
走る前は、5km=50分の制限時間が切れるかしら? と心配していた。そんな、本来なら最後尾にいるべきランナーが、前方集団を全力疾走。まるでサラブレッドの中に亀がまぎれこんだようなものである。
まだか? まだか? と思っていると、とうとう、お目当ての「給スイカ所」が現れた。真っ赤に輝くスイカの山が、みずみずしい光を放っている。だが、トップランナーらは、テントの方を見向きもせずに猛ダッシュ。
一方、3切れもお替わりしたわたしの順位は適正なところに落ち着いて、結局、594人中258位でゴールイン。その後、無料のワゴンサービスで、大玉1個ほどを思う存分むさぼった。
記録的な猛暑にしてスイカざんまいだったこの夏を振り返っていると、心の中をスーッと寂しい風が吹く。
再会までの時間は、気が遠くなるほど長い。
スイカ、スイカ。スイカ甘いか、しょっぱいか……。
=2018年10月12日掲載=