先週の木曜日、仕事仲間のAさんの様子がいつもと違う。
会議では常に粘り腰なのに、その日に限って、はいはい了解! と、あっさり話を切り上げる。その態度に、皆顔を見合わせて「?」
終了後、体調でも悪いんですか? と尋ねると、実はこの後、絶対に負けられない戦いがあるという。
聞くと、富山の球根組合が、その日正午から数量限定の福袋を売り出す。Aさんは昨年運よくゲットできたが、何とバケツ一杯の球根が届き、庭中に夢のようなチューリップ畑が広がった。今年も頑張れと奥さんから厳命が下ったという。
ふふふ。ダンディーなAさんがサイトとにらめっこしている姿を想像すると、何だか滑稽である。
Aさんと別れて、近くのカフェで、スマホのメールをチェック。時刻はほぼ正午である。ふと気になって球根組合のサイトを覗くと、案の定アクセスが集中しているらしく、申し込みボタンを何度押しても、微動だにしない。となると意地になり、しつこくタップを繰り返してしまう。と、フッと画面が切り替わった。
……つながってしまった。しかし、うちの庭に花壇はない……。だけど、こうなった以上、ここは買い!
ふいに心に浮かんだのは、日に焼けたJ子の顔だ。
彼女は昔の仕事仲間だが、先日会った時、アメリカの絵本作家、ターシャ・テューダーのように自分の庭を作って暮らしたい! と熱く語っていた。近々、庭のある家に引っ越すという噂も耳にしている。
そこで、福袋の送付先を彼女の住所に指定した。ま、彼女にはいろいろ借りもあるしね!
Aさん、そしてJ子。考えてみると、最近、土いじり女子、そして男子が、周りでジワジワ増えている。そういや、皆やけに顔色がいい。何か秘密のエキスでも、土から吸い上げているのではあるまいか。
うむむ。出遅れたわたしとしては、ちょっと地団駄なのである。
=2018年12月14日掲載=