仕事の資料がどんどん増える。いつのまにか保管用の倉庫まで満杯になってしまった。
このままでは増殖するばかりである。そこで、いま流行りの「ダンシャリ」をすることに決め、先月末、現在より小さなコンテナ倉庫に引っ越しをした。
「本」と書いてある段ボールは、そのまま閉じて古本屋へ。
「仕事の資料」という段ボールは、ひとつずつ、中身を確認する。
とそこに「福島県」と書かれた箱がある。あぁ〜、10年以上前の資料だ。「うつくしま、ふくしま」の次代のスローガンを決める競合コンペに、あるチームのコピーライターとして参加して負けたのだった。
パラパラと古いノートをめくると「うつくしま、ふくしま。アゲイン」。次のページには「うつくしま、フォーエバー」とある。
うへ〜、今までのスローガンの尻馬に乗ったコバンザメ的コピーばかり。これでは競合コンペでは弱いだろう。
満開の桜も、なんのその。それから丸2日かけて、いままでの倉庫を空っぽにした。
深夜、ガラーンとした床を見回すと、どこかから忍び込んだ桜の花びらが数枚!
故郷の桜はこれからが本番だろう。
子供の頃は、ニュースを見て「東京はもう満開だって!」と、悔しがったものだ。
でも、遅れてやって来る桜の方が、ほんとうは、ずっと美しい。
待ち焦がれる贅沢な時間を、くれるからである。
=2013年4月9日掲載=