南相馬市の沿岸部に、国内最大級のメガソーラー(大規模太陽光発電所)ができるという。
降り注ぐ太陽光を集める、黒光りしたソーラーパネルの瓦(いらか)の波と、雲の波…。そんなイメージが心に浮かんだ。
実際に、メガソーラーというものを見てみたい!と思った。調べると、最近つくば(茨城県)にひとつ完成したという。翌日、秋葉原から「つくばエクスプレス」に乗った。
駅前で尋ねると「ソーラーけ?国道を歩いていぐと、そのうち見えてくるって」という。
しかし、見えたのは、田んぼと工場の間に、ぶどう棚くらいの間隔で、魚のうろこのように整然と並んだ白いパネルだけだった。え、白なの?
警備の人に「中に入ってもいい?」と聞くと「ダメだよ~お姉ちゃん」と、ケラケラ笑われる。
この発電所は、裏の畑でナスやキュウリをつくるようなさりげなさで電気をつくり、近所の大規模スーパーなどに、売り始めているのだった。
南相馬のものは、総面積で、ここの五十倍くらいになるだろう。
静かである。思わず、目を閉じる。
機械音がないから、虫の声がよく聴こえる。蒸気が出ないから、涼しい風がスーッと流れていく。あたりまえか…。
バラ線の向こうのパネル棚は、気負わず、ひたむきに電気を収穫する、静かな、静かな畑であった。太陽さえあれば、ほかにはもう何もいらない。
=2012年7月19日掲載=