日本代表はベスト16で敗退してしまったが、W杯カタール大会は、今なお盛り上がり続けている。
今大会はインターネット放送局のAbema(アベマ)が全試合無料中継を実施。応援の裾野を広げた。
日本戦の解説は本田圭佑氏。彼は選手時代から、実力も個性も抜きん出た存在だったが、解説でも、本音まみれの語り口が、視聴者の心をガッチリつかんだ。中でも、選手を「さん付け」で呼ぶこだわりが一気に評判になった。
自分よりずっと年下になる伊東純也選手を「伊東さん」、鎌田大地選手を「鎌田さん」……と敬称付きで呼ぶ解説はわたしたちが今まで耳にした覚えのないもの。
違和感がなかったといえばウソになる。スポーツの実況解説、特にサッカーはスピードが命。選手を「さん付け」するのはまだるっこしいんじゃない?
それに、自分の親しい選手のことはニックネーム呼び(例えば、ゴールキーパーの権田選手のことは「ゴンちゃん」、久保建英選手のことは「タケ」)するのに、接点のない選手のことだけ「さん付け」だなんて、落差ありすぎじゃない? と感じたのである。
だが、ドイツ戦終了後、「スポーツ界の無意味な縦社会はなくした方がいい。関係が深くない先輩に偉そうにされると、ん?誰?って思ってしまう」と本田氏自身がツイッターで「さん付け」にした理由を説明するのを見て、なるほどそういうことかと、合点がいった。
要は、よく知らない後輩に対して上から目線でモノを言う、サッカー界のわけわからん権威になりたくなかったのだ。
人の呼び方は、相手への敬意のはじまり。本田圭佑解説は、年上には絶対服従! という、長年この国にはびこってきた年功序列の悪習に、まず形からノーを突きつけた。
=2022年12月9日掲載=