先日のロケ帰り、第1京浜を、品川から銀座に向かって移動していた。右手に汐留の高層ビル群が姿を現したあたりで、左手の景色が気になって、わたしは思わず下車してしまった。
建設中の「虎ノ門ヒルズ」に至る、サッカーグラウンドを縦に2つ並べたほどの区画が、すこーんと、更地になっていたのである。
このへんはかつて、精米所、神社の鳥居、魚料理の店などが、映画「三丁目の夕日」のセットよろしく、立ち並んでいた。もぬけの殻になった空き地は、立ち入り禁止のフェンスと警備員に、ものものしくガードされている。
うろうろフェンスを回り込んで行くと「環状第2号線・地上部」と書かれたボードを発見。説明図によるとこの地中に、環状2号線が建設されているらしい。
そう言えば、「幻のマッカーサー道路」と呼ばれ、戦後、中ぶらりんになっていた計画道路が、65年ぶりに地下に着工したというニュースを耳にしていた。
地上部こそ、このように静かだが、地中では、いままさに最新のモグラ技術で、エッサホイサと地下道が掘られているのに違いない。
東京の地下には、すでに10以上の地下鉄路線が、うねうねと通っている。3月には、東急東横線がたった一夜で、渋谷駅の地下に潜って、話題になった。
子供の頃夢見た、縦横無尽に乗り物が行き交う空中都市は、地下でもう、実現しているのかもしれない。
1、2年の内に、延長した山手トンネルとこの環状2号線が地下に参入する。
いのちは消滅と誕生を繰り返す。だが、増殖する都市は息絶える暇もなく、再生だけを上書きしていく。
不老不死のモグラ都市、ただいま建設快調である。
=2013年7月2日掲載=