知ってる人は知っているが、出版社の宝島社が毎年「このマンガがすごい!」というランキングを発表している。オトコ編とオンナ編があって、今年度の第1位は『チェンソーマン』と『女の園の星』だった。
前者は人気絶頂だが、後者は聞いたことがなかったので、さっそくポチして読んでみた。内容は、全編「女子校あるある」。そうそう女子校ってこうよねと、膝を叩きたくなるエピソードの連発だ。
例えば、教室で犬を飼っているクラスがある。実際にそんな学校はないだろうが、女子校ならあり得なくもない気がするのがミソ。
この「クラス犬」はたしかに可愛がられているが、誰かがふいにいいだす「名前変えようよ」のひと言で、「セツコ」→「ふくたん(副担任の略)」→「タピオカ」と、あっさりコロコロ名前を変えられてしまう。
出世魚じゃあるまいし、犬にしてみりゃ、いい迷惑だ。だが、傍若無人な彼女たちにとっては、面白さこそが正義。若さゆえの身勝手は止められない。
そこで思い出したのが、わたしが女子高生だった頃、教室のベランダの真下で、用務員さんが白い犬を飼っていた。きっかけなんか何もなく、ある日、誰かが「名前変えようよ」といいだして「ねこ」という名前をつけた。わたしたちは朝な夕なに「ねこ、上見て〜」「ワン!」「ねこ、お弁当あげる〜」「ワン!」などと呼びかけて、ゲラゲラ笑った。
ある日、だれかが投げたお弁当のからあげが、用務員さんの頭に命中。温和なおじさんがとうとうぶち切れ、今まで聞いたこともないような声で「いい加減にしろ。◯△※◎〜」と怒鳴った。3階を見上げて顔から湯気を噴いて仁王立ちする姿は、まるで赤鬼のようだった。
さて、わたしは、教育の現場では「男女は席を同じゅうすべし」派である。
だが、このマンガが描くように、「女の園」は、太陽を持たないキラめく惑星だ。戻りたくはないけれど、何だかちょっと、懐かしい。
=2020年12月25日掲載=