民法の改正で成年年齢が18歳に引き下げられた。
だが、ほとんどの市区町村では、今まで通り20歳を対象に「成人式」から「はたちの集い」的な名称に変えて、式典が挙行された。
テレビのニュースを見ていたら、「漢字の『成人式』のほうがよかった。ひらがなの『はたち』はイマイチ」と意見を述べる晴れ着姿の若者が映し出された。
それが出席者の総意かどうかは別にしても「はたち」と「成人」を比べた時、たしかに後者には大人としての覚悟を迫られるようないかめしさがある。
通過儀礼としての式典には、きっと漢字のほうが合っていたのだろう。
一方、わたしが広告の仕事で、かなと漢字で迷った時は、ほぼ100%かなのほうを選ぶようにしている。ひらがな率を上げることが、読みやすい文章にする近道だと思っているからだ。そんなわけで、以下のような漢字は、この何十年、たぶん書いたことがない。概ね(おおむね)、折角(せっかく)、是非(ぜひ)、中々(なかなか)、益々(ますます)、丁度(ちょうど)、何処(どこ)、貴方(あなた)、所謂(いわゆる)などなど……。
ところが漢字って、書かないだけでなく、読めなくもなっていたようなのだ。
先日、カフェの注文カウンターでメニューに「具沢山のスープ」とあるのに目をつけ、行列の2番目に並んで待ち構えていた。
すると、わたしの前に立っていたスーツ姿の若い男性が「この、なんとか山のスープをください」と言った。「ぐだくさんのスープですね?」と店員さんが復唱するのを聞いた時、思わず「え〜っ!」と声が漏れそうになった。
わたしも同じ。具沢山がとっさに読めず、「この、なんとか山のスープを」と言おうと思っていたからだ。
世の中のあちこちで、漢字離れが、進行中……。
=2023年1月13日掲載=