広告業界あるあるといえば、連休明け初日のプレゼン。「休み明けによろしく」などといわれて、休日返上でアイデアを考えるのである。
だが、働き方改革の影響か。たまたま、お得意先に恵まれたのか。わたしに限っていえば、今年はそれがなかった。
うれしくなって、長い連休の後半、前から興味を持っていた、ウクレレの練習に取りかかることにした。
動画サイトに首ったけ。慣れない左手の指先で、痛いほど4本の弦を押さえる。ズレていた音が、だんだん整ってくる…。その時なぜか、幼稚園の頃の記憶がヒョイと浮かび上がってきた。
6才の頃、木製の素麺の箱をもらって、お琴を作ろうと思いついた。箱のへりを物差しで計り、1㎝ごとに鉛筆で印をつけ、キリの先で浅い溝を掘り、15本の輪ゴムをはめていった。
琴柱などない、超シンプルな構造。ところが、高い音向きの輪ゴムはそろっているが、狙った低音が出せそうな、のびた輪ゴムの数が足りない。
親せきや友だちにも協力を要請。しかし低い「レ」の音をピタリと出せる輪ゴムには出会えなかった。
あきらめかけたある日、祖母の家の裏の道路で、敷石の下に埋まっている、のびて汚れた茶色の輪ゴムを発見。ドキドキしながら引き出して持ち帰り、木箱にはめて弾いてみると、探していたまさに「レ」の音がブオォォン!と鳴り響いた。
一体、何調だったのだろう? 2オクターブをつま弾くことのできる、お手製の弦楽器の完成だった。
オトナたちからは不潔だと大不評。木箱には鉛筆の跡が汚く広がっていたし、輪ゴムはどれも黒ずんでいた。
でも、探し求めていた音を見つけあてた満足感は大きかった。弦楽器の魅力って、音の宝探しなのかもね。
ふと、思い出の琴線をも震わせた、ウクレレ令和。
何だかハマりそうな予感がする。
=2019年5月10日掲載=