携帯で時刻を確認すると5時50分。「7時でいいのに、1時間も早く来ちゃった!」と気づいた時には集合場所の原宿だった。
数日前、制作スタッフからロケの集合時間の連絡を受けた時、原宿駅に7時?遅すぎない?もっと早くていいんじゃない?と、口には出さず自問した心の残像が、こんな形のポカにつながった。
早朝の原宿でどうやって時間をつぶそう。キョロキョロしていると、改札口を出て来る人の流れに、駅の裏側に回り込んでは消えて行く断続的な人影がある。
しばらく見ていると、外国人のバックパッカー男子が1人。次にバッグをはすかいに掛け、白いティアラを頭に乗せた女子が1人。トコトコと、くだんのルートに吸い込まれていく。その光景で好奇心はマックスに。
思わず彼女の後ろ姿を追い掛けたわたしが見たものは、大鳥居と、暗い森から寄せ来る静寂の波動であった。
あぁ、そういうことか。かの有名な明治神宮の入り口が、ここだったのか。
わたしは神社音痴な人間で、いままで初詣というものをしたことがない。それで、この場所が、盲点的空間になっていたのである。原宿なんて、どこも知っているつもりだったのに…。
わたしのようなタイプが生息している一方で、20代女子の間では、神社ブームが起きていると聞く。早朝から吸い込まれていた人影の理由はそれか…。
白いティアラの彼女を目で追い掛けながら、緑深い参道をしずしずと進む。本殿に着き、見よう見まねで参拝をすませると、なぜか神聖な気分に包まれた。
次の瞬間、ハッと時間を思い出し、長い参道を逆走するはめになったが、朝一番に感じた清々しさは、その日の夜中まで続いていた。
=2014年5月20日掲載=