テレビの旅番組。主役のタレントが自転車で向かう先は、廃校!
生い茂る夏草、そびえる木々、置き去りにされた木造の校舎。そのたたずまいは、わたしたちの心を揺さぶる原風景である。
それにしても、最近、いろんな場面で廃校が目につく。
昨年末、友人の子どもの通う区立小学校が廃校になると聞かされて、えっ?と驚いた。友人は新宿から歩いて通えるほどの都心に住んでいたので、違和感があったのだ。
新宿で仕事があった日の昼、その小学校のことが気になった。
ケータイのマップを頼りに探し当てると、目の前にすーっと、白い鉄板で覆われた空間が現れた。それは工事現場の外壁で、ショベルカーのうなる音や、鉄筋がガラガラと崩れる音が漏れてくる。
「ここ、小学校でしょう?」と、ヘルメットの作業員に尋ねると、「取り壊し中。運動場になる予定」という。
廃校は、ひなびた山村の専売特許ではない。このような都心にもあり、この先、日本中の町で増えていくのだろう。
国土交通省によると、2050年、日本の総人口は3300万人も少なくなるらしい。少子化というが、その実態は、今後100年足らずで人の数が明治時代の水準に、一気に戻っていくということだ。
鉄板の向こうで響くドカーン、ガラガラという音を聞きながら、解体の後にやってくる、再生のことを考えていた。
=2012年9月6日掲載=