先月末、新しいアイフォンが発売された。でも、何だか盛り上がりに欠けるなぁ〜と思っていたら、ストア前に数日前から徹夜で陣取り続ける、いつもの風景が見当たらない。どうやら、今回に限って、発売日は予約のみ。並ぶ必要がなくなったようだ。
街には、普段から、さまざまな行列ができている。
ドリームジャンボ宝くじや、郵便局の各種売り出し、有名ラーメン店などの老舗行列はもとより、シカゴから来たポップコーン、ハワイで人気のパンケーキ、イスラエル生まれのチョコレートバーなどなど、黒船ショップの長い行列も、見慣れた情景のひとつである。
そんな行列ラッシュの中で、この夏、熱気を放った場所のひとつが、表参道に出現した台湾発のかき氷、アイスモンスター。たまたま猛暑の日に通り掛かったが、4〜5時間待ちという言葉が耳に飛びこんできて、こりゃアカン!と素通り…。
だが後で聞くと、申し込みしておくと、数時間後に携帯メールで呼び出してくれるスタイルだったらしい。知らなかった! それが、山盛りのマンゴー&超絶美味だとうわさのかき氷を、わたしが食べ損なった瞬間だった。
世の中には、行列で待てる人と、待てない人がいる。せっかちなわたしは、残念ながら後者なので、並んでいる人の様子を横目で見ながら、いつも、指をくわえて通り過ぎている。
日本に来た外国人の驚きのひとつが、日本人がよく並ぶ事だという。長蛇の列は、お客のお行儀のよさとも言えるが、同時に、思いの強さの表現だと言い換えることもできるだろう。
行列なんて、ひとりひとりに、何時間待ってでも、これが欲しいんだ! という強い意志がなければ、自然に消滅してしまうものなのだから。
そう考えると、行列とは、揺らぎやすき価値観の揺らぎを試す「苦行」であり「修行」なのだといえるかもしれない。
=2015年10月6日掲載=