このところ、ウイルスを気にして、化粧品や生活雑貨の購入はすべて通販まかせになっていた。無駄使いは減ったが、ストレスは溜まる一方。
だが、ようやく感染者数も落ち着いてきて、なんとなくどこかへ出かけたい。
そんなわたしを引き寄せたのは、近所の大型ドラッグストアである。
久しぶりにふらふらして、満足。だが、帰宅後、購入品を品定めしていると、手が止まった。面白がってカゴに放り込んだ物の中に、意味不明な小箱を発見したからである。
ナイトミン・耳ほぐタイム。うむむ、これいる? 5回使えるみたいだけど、なんと、700円もしたのかぁ。と、反省しながら、説明を読んでみた。
耳栓をして、その上から発熱体をかぶせるのか。すると、耳元がじんわり熱くなって、熟睡できるのね。
実はわたしは鬼のように寝付きがいい。なのにどうして、これに手を伸ばしたのだろう。魔が差した自分を自分で訝(いぶか)りながら、さっそくその夜、トライしてみた。
黒いスポンジのイヤーピースのサイズは大と小どちらかが選べるようになっている。その上に、白い発熱体をカチッとはめる仕組みである。発熱時間は20分。なるほど、20分以内に眠りに落ちなさいってわけね。
すると、「羊が1匹、羊が2匹…」ならぬ、「あと20分、あと19分…」という自分の声が頭の中でチックタックと時を刻みはじめて、結局、耳元が温かい間は、眠りにつくことができなかった。
だが、耳栓のおかげで、エアコンなどの生活音はかなり遮断されたから、変に意識さえしなければ、きっといつもより心地よく、入眠できたのだろう。
寝耳に発熱。何事にも身構えてしまう小心者にとって、リラックスへの道は遠いのである。
=2021年11月26日掲載=