先月末の「春節」の時期、久しぶりにツアーの大型バスを見かけた。タイや台湾からの旅行者だろうか。銀座通りが華やいでいた。
そんな銀座4丁目を、わたしは小走りに移動していた。普段から打ち合わせノートとして愛用しているスケッチブックのページが切れて、新しいのを買わなくちゃと焦っていたのだ。
だが、わたしが目指していたのは、文房具なら何でも揃う老舗の「伊東屋」ではない。路線価で全国トップの「鳩居堂(きゅうきょどう)」でもない。流行の文房具が充実している「銀座ロフト」でもなかった。
そそくさと足を向けたのは100円ショップ。コロナ禍で足が遠のいている間に、銀座は100円&300円ショップ天国になっている。2年前に「ワッツ」ができたのを皮切りに、「ダイソー」、「スタンダードプロダクツ」、「スリーピー」が開店。有楽町寄りにも「スリーコインズプラス」ができて、お買い物セレブ垂唾の街が、もう一つ別の顔を持ちはじめた。
その日わたしが駆け込んだのは銀座のど真ん中にある「セリア」。100円以上の物も売っている100円ショップや、300円以上の物もある300円ショップが増えているなか、センスのいい商品がいまだにオール100円なのが、このお店のいいところ。
結局、スケッチブックだけでなく、バインダー、白色ペン、透明ポイントシール、黒色ふせんまで、ちまちまと20点ほどの文房具を購入した。
通りに出ると、お洒落なアジア人一家がショーウィンドゥの前で記念撮影なんかをしている。以前のように、持ち切れないほど爆買いしている人は見かけない。
ふと見ると、カフェのガラスに映っている自分。思った以上に買い込んだようで、背中のリュックが風船のようにふくらんでいる。そんな銀座の爆買い女のシルエットに、思わず少し吹き出してしまった。
=2023年2月10日掲載=