先日、画商をしている知人と雑談をしていると「新幹線の網棚に、超有名な画家の絵を忘れて、参りました」などといい始めた。
さぞかし高額な絵だろう。「ええっ、いくらするの?」などと、心配顔で下世話なことを尋ねはしたが、心の中では、きっと出てきたのだろうと思っていた。
案の定、忘れ物は終点の広島駅で無事に見つかったという。
それを聞いて、「でしょうね! 」とはいわないが、ぬはは〜 と、ぬるく笑う。
なぜって、いくら電車に忘れ物をしても、必ずブーメランのように戻ってくることを、わたし自身、何度も経験しているからである。
お前の忘れ物が、安物だからじゃないの? と、おっしゃりたいかもしれない。だが、ブーメラン経験の中には、貴重品であるノートパソコンまで入っているのだ。
だから、滝川クリステルさんが五輪招致のスピーチで、「東京で何かを失くしても、必ず戻ってきます。たとえ現金でも! 」と、大見得を切った気持ちは、とてもよくわかる。
ところで、先日、是枝裕和監督の「万引き家族」という映画がカンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞したというニュースが飛び込んできた。ヤバくないっすか? というのが、題名を聞いた直後の感想。
せっかく、治安のよい国ニッポンのイメージが流布されている時に、その手の家族の話は隠しておきませんか? と、腰が引けちゃうのは、小心者ゆえか。
でも、最近、テレビにもよく「万引きGメン」が出てくるものね。捕まえられているのは、万引きに何かの救いを求めているような人ばかり。
うーん、こんなにも忘れ物が戻ってくる国に、一方で、万引きすることでしか生きられない人も存在していて、ってことかぁ……などと、ウダウダ、考える。
それもこれも、実際に映画を見てから物をいえ、という話ではありましょうが。
=2018年6月22日掲載=