ヒトの五感の中で、一番記憶に直結しているのは、においだという。
嗅覚は、脳の中にある、記憶や感情を司る扁桃体や海馬という部分とつながっているのだそう。ふと嗅いだにおいに思い出がよみがえるのは、そのためか。
先日、池袋パルコで「におい展」というイベントをやっていたので覗きに(いや、嗅ぎに)行ってみた。
会場に入ると、中はカップルでいっぱい。主催者の狙いは当たったようだ。
まずは、麝香鹿(じゃこうじか)、安息香(あんそくこう)などの香水やアロマオイルの元が、小さなガラス容器に入れられて、整然と並んでいた。
しかし、観客のお目当ては悪臭の方。当然わたしも、そちらに興味しんしん。
悪臭は、その発生源ごとにフタ付きのアクリルの小箱に格納され、さらに、その小箱は、定員1~2名ほどのガラス張りの小部屋の中に陳列。厳重である。
一昨年、異臭騒ぎでJR電車を止めた台湾の臭豆腐の部屋があったので入ってみた。ウッ! 運転見合わせもやむなし。
だがその奥には、世界一臭いといわれる缶詰が待っていた。スウェーデンからやって来た、発酵した塩漬けニシンの缶詰、シュールストレミングだ。開缶時には発酵したガスの力で、中身が勢いよく吹き出すという恐怖の缶詰。エイリアンの体液も真っ青である。
その臭いは悶絶レベル。これと比べたら、南国のドリアンとか新島のクサヤとか、まるで赤子の手をひねるようなもの。噂どおりの破壊力に、会場を出た後も臭いがまとわりついているような気がして、思わず何度も身体をクンクンしてしまった。
もし絶対に記憶したいことがあったら、この缶詰を嗅ぎながら覚えるのはどうだろう。脳の扁桃体や海馬が刺激されて、おそらく効果絶大。名付けて、鼻曲がり記憶法。ナシですか?
=2017年1月26日掲載=