友人のY子に「明日のBリーグ行かない?」と誘われたわたしは、反射的に「行こっかなー」と答えていた。2週間前の話である。
新型コロナウィルスは、まだ対岸の火事だった。今ならきっと、行かないだろう。
Bリーグというのは、4年前に誕生した、日本の男子プロバスケのトップリーグ。話題なのに、1度も行こうとしなかった理由をつらつら考えてみると、ふと思い当たる事があった。
中学・高校時代、体育の先生が休むと、自動的に「女子は体育館でバスケ」になることが多かった。そんなバスケは、青春のストレス解消以外の何者でもなく、苦い思い出が残った。
髪の毛は引きちぎられ、ブルマーは脱げ、鼻の穴のなかに誰かの指が入るのは当たり前。手の甲には、無数の引っかき傷ができた。誰かの血で床が赤く染まり、モップ掛けのために試合が中断するまで、あちこちでシュールな揉み合いが続いた。皆、若さがあり余っていたのだ。
そんなトラウマもあって、初見参となったBリーグ。
強豪、大阪VS千葉のカードということもあり、1時間前に着いた会場はすでに、ライトの点滅や音楽でギラッギラ! 試合中も、応援BGMが流れて、まるでフェスのようなノリだった。
試合中も、監督のタイムがかかると、ミニスカートのチアリーダーたちが一斉にコート上に躍り出てダンス、ダンス。退屈を感じる暇が、たったの1秒もない。
2m超の外国人選手を小柄な日本人選手がドリブルで抜く瞬間はワクワクしたし、コートが狭い分、イケメン選手の顔がすぐそこ!
あまりにも徹底したエンタメぶりに、あっけにとられながら、「これだけ熱けりゃ、コロナも逃げるね」と、Y子と2人、ウキウキ家路についたのだった。
その翌々日、東京マラソンの一般参加が中止になり、この決定が皮切りになって、次々にスポーツやイベントの中止ラッシュが始まることも知らずに……。
=2020年2月28日掲載=