オリンピックで街は変わる。よくも悪くも、外見をきれいに整えるのである。
東京の工事は、今がたけなわ。建設中のビルの多くは、仮囲いの中である。
街の姿よりも先に、変身を始めているのが、タクシーの形かもしれない。
最近目に付くミニバン型のタクシーは、一昨年の東京モーターショーでデビューした。車名は、JPN TAXI(ジャパン タクシー)。トヨタ製で、色はすべて、ロンドンタクシーとも見まごう黒塗りである。
最近、郡山でも何台か見掛けたから、おそらく全国的に増えているのだろう。
都内のタクシーの横腹にはオリンピックの市松模様が飾られていて、これが、いい味を出している。
最初は慣れないスライドドアに戸惑ったが、目線が高くて見晴らしがいい。大型バゲッジも詰めるし、車椅子でも乗れるという。
思わず「普通のタクシーと同じ値段(初乗り410円)でいいんですか?」と確認してしまったほど、室内は広々。くつろげる。
実はわたしはタクシーにはうるさいのだ。何しろ、数十年前、コピーライターとして初めて担当した仕事が「クラウンのタクシーカタログ」なのである。
だからいつだって、クラウンのタクシーと見ると、「さすが、フルフレーム四輪独立懸架の足回りは、乗り心地がいいですね〜!」などと、超オタクな話題を振って、運転手さんを嬉しがらせてきた。
さみしいことだが、そんなセダン型のタクシーは製造終了になったらしい。
いつかわたしたちも、「オリンピックの前は、タクシーといえば、グリーンやオレンジ色のセダンだったのよ」なんてことを、口にしたりするのだろうか。
年上の人たちが「オリンピックの前、東京の空は、もっと広くてねぇ」などと、遠い目をして語るのと同じように……。
=2019年7月12日掲載=