朝ランしながら、イヤホンでラジオを聞いていた。
パーソナリティーの男性が言うのには「昭和のるるるといえば、由紀さおり。令和のるるるといえば、この曲です!」とのこと。
絶妙なあおりにのって流れてきたのは、奇妙礼太郎というミュージシャンの「ハミングバード」という歌だった。先月リリースされた新曲だという。
たしかに明るく引きつける曲ではあったが、その時は「へぇ、これが令和のるるるかぁ」と感じただけ。
ところが、なぜだ? それから1週間が過ぎた今も、るーるる、るるるっという部分が、頭の中をリピートしつづけている。電車の中でも、食事時にも、夜ベッドに入ってからも、るーるる、るるるっが頭を離れない。知らない内に、がつんとハートをつかまれていたみたい。
思い出そうとしても、るるる以外の歌詞は曖昧なのだから、やっぱりこれは、るるるの魔法なのだろう。
振り返ってみると、るるるで歌われる曲は、いままでだって結構あった。たとえば、徹子の部屋のオープニングの、るーるる、るるる、るーるるとか。北の国からのるーるー、るるるるるーとか…。
わたしのカラオケ友だちにも一人、歌詞を覚えるのが苦手で、いつも歌詞をるるるでごまかす、ところが、それがなんだか不思議に感動的な歌になっちゃう、そんな人がいる。
ひょっとしたら、情報を集めることばかり、覚えることばかりが増えた現代人にとって、まるで歌詞を忘れることを前提にしたようなるるるな曲は、それだけで癒しの効果があるのかもしれない。そう。時代は足し算よりも引き算を求めているのだ。
これをを書いている合間にも、「ハミングバード」のるーるる、るるるっが頭の中を駆け巡っている。
=2021年7月9日掲載=