先週、銀座のデパートへ「SPY+FAMILY展」を見に行った。人気アニメ(スパイファミリー)の世界観に触れるチャンス。
フロアの入り口は、夏休みの学生、ファミリー、大人の漫画ファンがごちゃ混ぜ。折りしも、灼熱の午後である。誰もが入場予約時間が来るまでじっと動かず、体温調整に努めている。だって、好きなアニメでフィーバーするのは必然ってなもんだ。入場前に平熱に戻しておかないと、いのちに関わるからである。
と、少し大ゲサになったが、肝心の展覧会はというと、原作の生原稿を惜しみなく展示。登場人物の家や衣裳なども再現され、「そうそう、これよね」と、想像力の確認作業を楽しむ、1時間余りのツアーだった。
打ち明けると、わたしは毎晩欠かさず、スマホでこのアニメを流しながら就寝している。「眠くなるアニメってこと?」と思われたら心外。シリアスなストーリーとユーモラスな会話のさじ加減があまりにも居心地よく、いつの間にか眠りに落ちてしまう。
主人公はフォージャー家の3人。父はスパイ、母は殺し屋、娘のアーニャ(小学生)は超能力者。彼らは互いに正体を隠して、偽装家族を演じている。
アーニャの健気さがグッとくる。何しろ、超能力があるので、父の思いも、母の仕事もお見通し。過酷な任務に立ち向かう父の使命が察せちゃうから、陰ながらお手伝いをする。父のため、クラスのいじめっ子(前首相の息子)と、しおしおと仲直りするシーンなど、胸が痛くなるほどだ。確かに、子どもって、仮に超能力がなくても、こういうところあるよね。
このように、SPY+FAMILYは、自分が子どもだった頃の生真面目さを追体験させてくれるタイムマシンでもある。楽しくも切ない、はるかな昔…。
アーニャなら、きっとこう言う。「あざざます(ありがとう)!」
=2023年8月11日掲載=