新型コロナ騒動が始まって丸3年が過ぎた。
気の晴れない、我慢ばかりの1000日……。
仲のいい友だちと犬コロみたいにじゃれあいたい子供や、仕事帰りにお洒落してお出掛けしたい夜遊び女子なんかには、どれほどつまらない毎日だったことだろう。
いい大人のわたしでさえ、この3年、楽しい思い出がほぼほぼ見つからない。
だが、ムリやり探せば、なきにしもあらず。コロナのおかげ!と思っていることが実は1つだけある。
わたしには、結構目立つ八重歯が1本あった。昭和時代は、八重歯で人気のアイドルもいたぐらいで、むしろチャームポイント扱いされていたから意識していなかったのだが、最近になって突然気になり出して、あーあ、若い頃に直しておけばよかったと、地団駄を踏んでいた。今さらジローである。
そこにコロナがやってきた。オンライン会議ばかりで人と会う機会も減った。
そんな時、インターネットで小さな広告を見つけた。「2万円から始められる歯科矯正」という文字の横で、歯をキラキラさせたモデルが誘いかけている。
ワイヤーでガッチリ固めるのではなく、歯の上から透明のマウスピースをパカッとはめることで、苦痛なく歯並びを直す方法があるのは知っていたが、まさか、こんなに手の届く価格になっていたなんて!
驚いて、さっそく問い合わせてみると、考えることはみな同じ。申し込みが殺到して半年待ちだという。
残念、出遅れたかと悔しがりながらジリジリ待って、ようやく矯正がスタート。結局、ほぼ1年間、上下合わせて、18個のマウスピースを付け替えている間に、八重歯は消えた。今では自宅の鏡を前に、ニタニタ笑っているわたしである。
だが、相変わらず、マスク生活はつづく……。
「あれれ、歯並び、変わった?」と気づいてくれる人は、まだいない。
=2022年12月23日掲載=