まん延防止措置が全国的に解除された。そうはいっても、気は晴れない。
本当かどうかは別にして、「オミクロン株に感染している人が、都内では100人に1人よ」などという噂話を、耳にする。そのせいか、狭いお店で外食するのは気が引ける。
解除を前にした先週のこと、昼をまたぐ仕事の予定があった日に、家からサンドイッチを持参した。
お昼になって、都心の公園をのぞいてみると、あずま屋や木陰にあるベンチはどこも満席。皆、考えることは一緒らしく、ファストフードの紙袋を持っている人もいれば、お弁当箱を広げている人もいる。それぞれ1人ずつではあるが、あたり一面でピクニックが始まったような眺めである。
念入りに手指をアルコール綿でふいた後、サンドイッチを包んだラップをむいていると、鳩がやってきた。鳩は、新しく来た人の足元へまずは挨拶がわりに近寄って行く。何かをもらえそうだと思えば、せっかちに周りをうろつき、そうでないとわかると、あっさりと去る。驚くほどの賢さだ。
鳩がいなくなると、ふと、子ども時代のことを思い出した。
(あの頃は、外でモノを食べると、叱られたっけ……。)
小さい時に住んでいた家は、農耕用の馬が朝な夕なに往来し、歩きながら馬糞(ばふん)をまき散らす。そんなワイルドな通りに面していた。だから、清潔面からの注意だったのだが。
(なのに、その後もずっと、外でモノを食べることになんとなく罪悪感があったなぁ……。)
そんなことを脈絡なく思い浮かべながら、公園でサンドイッチをパクつく自分がおかしくなった。
日差しが優しいのも今のうち。そろそろ勇気を出して、お店ののれんをくぐる時期が来たのかもしれない。
=2022年3月25日掲載=