人には、いろんな顔がある。わたしも同じ。
ちょっと大切にしているのが、早朝ランナーとしての顔。秘密だが、実はランニングのことだけこっそりつぶやくブログを持っている。
そのブログを通じて知り合ったのが、沖縄在住の会社員、Nさん。私の朝ランに対して、Nさんは夜ラン。大雨でも降らない限り、ランを休まないのが共通点。お互いに顔も仕事も知らないが、走りの不調をボヤくと、真面目な彼は必ず何か役立つアドバイスをしてくれる。
さて、先日の東京マラソンに、そのNさんが初出場した。元々は2020年に抽選で当たっていたが、コロナ禍で大会が中止。3年越しの挑戦となった。
そこでわたしは、沿道に出て応援することにした。百均でキラキラした接着シートやモールなどを買い込んで「GO!N○○○さん」と書いた派手な応援ウチワを作成。折り返し地点のある門前仲町で待っていた。
Nさんが全身黒づくめで走って来るってことと、ゼッケン番号はわかっていた。そこで、あらゆる黒装束の人に、ウチワを振ってアピール。見逃すよりはマシだと思ったのだ。
こちらを見て恥ずかしそうにちょいと腕を上げる人。「ヘイヘーイ!」と陽気にこぶしを突き上げて応える人。その度に「ガンバレ〜!」と声をかける。
そうこうしているうちに、Nさんの方が先にわたしを発見。一目散に駆け寄ってきてくれた。派手なウチワが、遠くからでもよく目立ったという。やった!
Nさんはパチリと一緒に自撮りをして、「元気出た〜」と叫ぶと、Vサインして走り去っていった。
その後、ラスト2キロで両足がつったNさんだったが、無事完走。
打ち明けると、Nさんを探すついでに手当たり次第、声がけしていた時間帯の楽しかったこと。普段の生活では、そんなに人にからんだりはできない。
この心のホカホカ感は何だろう。
=2023年3月10日掲載=