先週、携わっているテレビ・コマーシャルの仕事の、仮編集があった。
撮影した映像を30秒につなぎ、ひとまず言葉や音楽を乗せてみるのである。
本編集前のこのプロセスは、いろんなパターンを作っては見比べ、作っては見比べる…。気の遠くなるような作業の連続で、深夜まで長引くのが普通。
スタッフは狭いスタジオに膝詰めで座り、引きも切らずお菓子に手を伸ばす。この日ばかりは、厳しいダイエットもお休みである。
楽しみは「仮ナレ」。声優やタレントさんのナレーションが入る部分に、スタッフの誰かが読んだ声を、仮に当ててみる。
以前一緒に仕事したチームでは、誰もがこの「仮ナレ」をやりたがり、ちょっとした争奪戦になった。仮だろうと、自分の声でナレーションを読むのは面白い。みんなが我先に、録音ブースに入りたがった。
実際、言葉が乗ると、ただの映像が完成したコマーシャルに、一気に近づく。1本、芯が通るのである。例えて言えば、洋服屋さんが、仮縫いしたパンツのウエストに、シュッとゴムを通す時の感じだろうか?
今回は、遅れてスタジオ入りすると、すでにディレクターの声が入っていた。おぉ、こうなるわけね!映像の流れが、生き物のようにつながる。その反対に、あぁ、こうなっちゃったのね!という部分もある。
無論、映像と音楽だけの超かっこいいコマーシャルも存在する。だが、やはりそれは少数。言葉の持つ説得力は、計り知れない。
準備した一つ一つのピースが組み合わさって、形になる瞬間の、ワクワク!
行く手に何があろうとも、もの作りの喜びは、ここに尽きるような気がする。
=2014年1月21日掲載=