最近テレビでよく「バック・トゥ・ザ・フューチャー」をやっている。
タイムトラベルを題材にしたこの映画のタイムマシンは「デロリアン」というスポーツカー。時代とともに燃料が、雷の放電→プルトニウム→ゴミと変化するところなど、目の付けどころがなかなか鋭い。
さて、ここだけの話。実はわたしも、今週火曜日、タイムマシンにのったらしい。
6月に入って少しずつ、リアルな取材や打合せが再開して、都心に出かける日々が戻ってきた。そして、今週の火曜日の午後、とうとう、久しぶりに銀座で打合せ。
メトロ銀座駅の細い階段から、地表の出口に到着したわたしの足が、ふいに止まった。今まで見たことのない強い光に包まれて、パーッと周囲が、白く反転した(ように感じた)。映画でよく見る、時間軸を移動した時に、周囲がゆがんだりする、アレである。
ふらふらと光の壁を出たとたん、そこには、以前どおりの銀座が広がっていた。だが、何かがおかしい。
3月から6月へ。止まっていた時計がいきなり動きだしたのだから当然だが、やっぱり、どこかが、現実離れしている。
そんなことを考えながら、打合せの時間まで、ウロウロさまよっていると、不思議な違和感が拭えなくなった。いつもの喧噪(けんそう)がない。外国語で叫びあう大声が聞こえない。路肩に観光バスが並んでいない。実際、火曜日の銀座は、あまりにも静かだった。
ブーンと音がするので見上げると、小さな飛行機が飛んでいた。
まてよ? ここって銀座によく似た別の星じゃない? と、ふと魔が差した。ついつい、よく知るユニクロやZARAのビルを目で探す。その時、サンローランの店内から好きな香りが漂ってきて、ほっと安心。
そう。3ヵ月の外出自粛は、時々、人をタイムマシンにのせるのである。
=2020年6月26日掲載=