連休の半ば、デレ~ッとソファに沈み込んでニュースを見ていると、調布市にある深大寺の「なんじゃもんじゃ」の木の花が満開になり、見物客で賑わっているという話題であった。親木は神宮外苑にあるとか。
ふーんと、眺めていたわたしは、ちょっと待てよと跳ね起きた。20年程前、千駄ヶ谷に仕事場があった頃、「なんじゃもんじゃ」の木の前を自転車でよく通ったことを思い出したのだ。確か白い花だったが、仕事でいっぱいいっぱいだった当時のわたしに、その花を眺める心の余裕はなく、花の形の記憶すら曖昧…。
子木がそれほどの人気なら、親木の方はどれくらいだろう?と気になって、連休明け、仕事の帰りに神宮外苑へ向かう。照りつける日差しの中、信濃町から数分ほどの街路樹の中に細々とその木は立っていた。
わたしの身長よりは高いが、添え木で守られた弱々しい佇まいは、記憶の中の大木の姿とはまるで別物。枝の先に咲いている花も、チョボチョボ。これでは誰も名前を尋ねたりはしないだろう。
横の説明板を見ると、この木は、3年前に2代目が枯れた後、2代目の実生から育てられ、昨年ここに植えられた3代目なのだという。そうだったのか。あの頃の大木は枯れてしまったのか。
それにしても、おかしな名前である。その由来で有名なのは、水戸黄門が、将軍にこの木の名を「なんじゃ?」と尋ねられ、返事に窮して「もんじゃ!」と答えたという説。
他にも、神事に利用する巨木を直接呼ぶことがはばかられたため、あえてこのような呼び方をしたという民俗学的な見解まで、諸説あるようだ。
いずれ3代目のこの「なんじゃもんじゃ」の木も、満開の花を咲かせて、深大寺の木のように、大勢の花見客を集めるのだろうか。
皆がその木の下に立ち止まって、「こりゃなんじゃ?」「いいもんじゃ!」と愉快に語り合いたくなるような、大木に育ってくれるといいのだけれど…。
=2017年5月12日掲載=