近所の幹線道路沿いで繁盛していたレストラン。そこが意匠替えして、建築関係のショールームに生まれ変わってから、はや数年。
今では、近隣でこの建物を知らない人はいない。
何しろクリスマス・イルミネーションの輝きが半端じゃなかった。期間も長くて、11月から3月くらいまで、連日の不夜城…。
そして、その派手な建物が、最近また大きく変貌した。入り口に座高2メートルほどの茶色い大型犬が出現し、石造りの門の上には、頭の幅が1メートル以上ある白い犬が顔を覗かせたのである。
一体どういうこと?と、皆が不思議に思っていると、怖いもの知らずの隣人が、単身、突撃取材を試みてくれた。グッドジョブ!
「ちゃんと理由があったのよ」と、彼女。「うちは愛犬家に力を入れてます!っていう広告だったんだって」
聞くと、そこの会社は、犬の足でも滑らない素材の床とか、猫が爪を研ぐ柱や、猫のための小さな出入り口が、あらかじめ付いている家を設計して、大好評。その手の住宅は、売り出せば即日完売なのだと言う。
なるほど合点のいく話ではある。ペット市場は今や拡大の一途だと言われる。
実際、ペットは掛け替えのない存在だ。わたしも子供の頃行方不明になった愛犬のベルを思い出すと、今でも涙が出ることがある。
また、表参道や錦糸町の駅前では、連日「震災で飼い主と離れ離れになったペットのために、募金をお願いします!」という声が、響き続けている。
その一方で、可愛い老犬の世話を、日常の何よりも優先して、自分が辛くなっている友人もいる。
わたしたちは、ペットを愛しつつ、愛しすぎないよう自制する時期に、そろそろ差し掛かっているのかもしれない。
=2014年6月17日掲載=