ネットの番組で、こんな大人は嫌って思う人いますか? と聞かれた若手俳優が「電車の中で無料ゲームをしている人」と答えて、笑いをとっていた。
それを見ながら、ちょっと複雑。だって、その大人ってわたしのことじゃん?
以前はわたしだって、彼と同じ意見だった。
いい歳こいて、読書でも考え事でも、電車の中でやるコト、他にあるでしょ。スマホの無料ゲームにうつつをぬかすなんて、日本人の幼児化ここまで来たかと、ザンネンな気持ちで眺めていた。
だが、今なら声を大にしていえる。「ふふふ、アナタまだまだ青いわね。スマホの無料ゲームの意味を知らないのね」と。
きっかけは、5年前。大きな化粧品会社の新発売キャンペーンの中心になっていた時のこと。半年間、休み無しのハードスケジュールが続き、やっと終わりが見えた頃、自分が自分でなくなくなった。毎日決まって午前11時近くになると、電話に出るのが怖くなり、耳をふさいで震えていた。
だが、なぜかそれ、必ず1時間で終わる。その後はケロッと元気になるのだから、ワケがわからなかった。
そのちょっと不思議な現象は、プロジェクトが終わるとスーッと消えた。信頼する整体の先生から「緊張が続いて、午前中の副交感神経から交感神経への切り替わりが、うまくいかなくなったんでしょう」といわれ、納得した。
その後は、自分を追いつめる仕事の受け方はしないことにした。
友だちに教えられて、電車の移動中にスマホゲームの「ポコポコ」を始めたのも、この時だ。ルールは簡単、レンガを動かして、同じ動物を3匹並べると、レンガが消える。基本はそれだけ。電車が目的地につく頃には、頭が空っぽ。気持ちが晴れ晴れ。
嫌な大人にはなりたくないなぁ。だが「ポコポコ」はムリしすぎない自分への約束。
短時間でも効果絶大な、お守り薬なのである。
=2020年9月11日掲載=