時間調整に、ふらり銀座の書店に寄ると、併設のカフェで写真展をやっている。
タイトルは「おくじょう」。昨年惜しまれつつ閉店した松坂屋銀座店へのオマージュ展だろうか?
順にパネルを見ていくと、被写体は、さび付き、色あせながらも、全国のデパートの屋根で頑張っている、屋上遊具たちである。
だが、最後の2枚には「東急プラザ蒲田、2014年3月2日閉鎖」「松坂屋上野店、3月11日閉鎖」というただし書きがある。
都会のエアーポケットのように脈々と続いてきた屋上遊園地が都内に4つあって、その内の2つが、来月、幕引きしてしまうらしい。
ふと、昭和の子供だった記憶が、思い出の走馬灯をくるくると回し始めた。
麦チョコ、カッターナイフ、背中のボタンを押すとお喋りする人形…。
子供の頃、隣町の郡山にあったうすい百貨店の売り場で、そんな都会的文物に目を見張った後には必ず、屋上という楽しみが待っていた。わたしのお気に入りは、コイン式ダンボの乗り物だった。
母と2人、頂点で停止して動かなくなった観覧車のゴンドラに、小1時間閉じ込められてしまい、助けを求めて大泣きしたこともある。
消えゆく屋上遊園地とは対照的に、都内では、先年成立した屋上緑化条例を受けて、屋上に緑を植え庭園を作るビルが増えている。
屋上は、子供と、昔子供だった大人の休憩所から、エコな大人の情報発信基地へ、変身を遂げようとしているのかもしれない。
でもあと半月、夢の続きはまだそこにある。これから蒲田まで、行って来ようかな?ムリかな?
わたしは、腕まくりして、時計をにらんだ。
=2014年2月18日掲載=