先週、銀座の百均に行った。使い込んできた消しゴムがとうとう小指の先ほどにすり減って、後釜が必要になったからである。
3個入りパックを手にしてレジに向かうと、通路の床に飴の包み紙みたいな透明ビニール袋が落ちていた。とっさにわたしはしゃがんでそれを指でつまむと、ジーンズの尻ポケットにつっこんだ。
この行動はほぼ無自覚。おそらくメジャーリーグの大谷選手がグラウンドで見せるゴミ拾いを潜在意識で好ましいと感じていて、じぶんも真似したってところだろう。あのスーパースターのトラウトも、大谷選手の影響でゴミを拾うようになったそうだから、おっちょこちょいのわたしが真似したとしても不思議はない。
店内は、お昼時のせいかお客が多かった。レジの行列に並んで会計を待っていると、わたしが先頭に立ったタイミングでスタッフルームの扉が開き、一人の女性店員が売り場に出てきた。
彼女は「こちらにどうぞ!」と、閉鎖していたレジを開放。一歩前進すると、「お客さま、先ほどはゴミを拾って下さってありがとうございます」と満面の笑顔で迎えてくれた。
「え、見てたの。どこで?」と、なぜか動揺するわたし。「?」とともに会計をすませて階下に降りた頃になって「そうか、防犯カメラか」と、気がついた。
てことは、もしわたしが万引き犯だったら、確かな証拠のもと、今頃はテレビの「万引き特番」さながら、別室で問い詰められてるってわけよね。
「ポ、ポケットに入っていたのは、ただのゴミですから、商品じゃありませんから」と、まるで連行された人のように、小声でぶつぶつ、言い訳をつぶやく…。
やましいことなど何もないのに、見られていたと知って緊張するのはなぜだろう。
ただの小心者?
=2023年9月22日掲載=