長財布、今風に言えば、ウォレット。
そのウォレットのデザイナーをしている友人の話では、このところ、カード入れの少ない財布の売れ行きは、ガタ落ちだと言う。皆、増殖するキャッシュカードやポイントカードの収納に困っているのだ。
果たして、わたしの財布も、カードでトランプ遊びができそうな程の、すし詰め状態。そこで、スタンプカードのダイエットを強行。勢い付いて、出番の減ったJ社のクレジットカードも整理する事にした。
ハンコだ何だと、面倒な手続きがいるのかな?と思いきや、解約はほんの3~4分の電話で終了。
「カードはハサミで切って処分して下さい。長い間のご利用、ありがとうございました」という先方の締めの言葉に、改めてカードの表面を見ると、1982という数字の刻印が。あぁ~まさしく積年のご愛顧じゃないか!
そうだ、新卒での入社式の当日、「当社のJカードの割り当ては3人です!」と総務の社員からの呼びかけがあり、じゃんけんに勝ち残って作ったカードだった。当時は、会社からの推薦がないと、カードの承認が下りるのに時間が掛かったんだっけ。そんなリアルな光景が、じわじわとよみがえる。
うっかり残高不足を続けて、「入金忘れたぁ?あんた先月も、そう言ったじゃねえかぁっ!」と、やくざ風味の督促電話を受けた事も、今となっては懐かしい。
わたしにとってクレジットカードは、買い物をしたとたん押し寄せてくる自己嫌悪から救ってくれる、心のお助けマンでもあった。
もちろん、枚数は少ないに越した事はない。「フランス人は10着しか服を持たない」というベストセラーにならって、10枚位のカードで風通しよく暮らせたら、さぞ快適だろう。
と言っているそばから、今日もまた、靴のかかとを直しに行って、新しいポイントカードを作ってしまった。
=2016年2月16日掲載=