先月、銀座のデパートで、「ふくしま食堂」と呼ばれるイベントが開催された。
有名料亭とレストランがショーケースを並べるデリカコーナーで、福島産の食材を使った特別メニューが競作・販売されたのである。
ある午後、仕事仲間のMちゃんと立ち寄ってみると、聞き慣れない声が飛びかっている。
恰幅のいいフランス人シェフが、「わーたーしはー、福島の牛肉とポテートとモーモを使いましたよー」と、表情豊かにメニューを説明。
一方、老舗鳥料理の店先では、「わたし、福島出身!」と名乗る女性客に、「じゃあ、もっと応援して!チキンカツ丼もどう?」と、販売員が威勢よく売り込み、どっと笑いが起きている。
高級デパートらしからぬ、気さくな雰囲気。福島の空気である。
その足で、地下鉄・銀座駅のコンコースへ。こちらでは別のイベント、「福島産直市」の最終日が開催中である。
応援する気持ちの強いMちゃんは、「うーん、普通の物産展だなぁ。福島の特権として何か発信できないかなぁ?」と、考え込んでいる。
聞くと、3日間たいそう人が出たそうで、産直品はほとんどが売れ切れ。梨が少し並んでいるだけである。仕事の移動があるのに、Mちゃんは大きいのを5つも買っている。
「雨が少なかった今年の果樹園は苦戦中だ」と、話していた故郷のいとこの顔が、浮かんでは消えた。
=2012年10月4日掲載=