もう10年以上、小さな赤い車に乗っていると言うとヘェ~赤って自分のクルマ?家族共有じゃなくて?と驚かれる事がよくある。
そんな反応は、福島の友人からは返ってこない。だって福島でマイカーを乗り回す女性は珍しくないから。
どう考えても、駐車場代が高く、交通インフラの整備された首都圏で、家族で車の複数台持ちをするのはクレバーではない。車がなければステーキにありつけるのに、粗食に耐えて自分の1台を維持しようとするのは、酔狂な人間だけだろう。
そんなわたしの、どんぶり勘定カーライフをずっと伴走してくれているのは、カスミさんという、一見楚々(そそ)とした女性である。長年付き合っている、ディーラーの担当営業だ。
車が好きという、ただそれだけの理由で、車の販売店に就職。トラブルの多いわたしの車がエンジンから火を噴いた時も、路上でストップした時も、カスミさんは猛スピードで、現場までふっ飛んできてくれた。
さて先日、ポストに彼女からのはがきを見つけて、わたしは、あちゃ〜!と叫んでしまった。今月は、銀行やアパレルの女性担当の退職が続いたので、一瞬、悪い予感が渦巻いたのだ。
だがはがきの中身は、何と、意表をついた店長就任の知らせ。「ますます元気にまいります!」という自筆が躍っている。
お客様には喜々として新しいオートマチックの説明をするが、自身は、マニュアル車で鍛え上げた、走り屋仕様。オートマ車に乗る時も、ブレーキは、クラッチ操作でなじんだ、左足。
そんなカスミさんが、20年間、現場をぶんぶん走り続けて、この春、とうとう店長になった。
好きな事を仕事にするなと言う人がいる。わたしはそうは思わない。
=2014年4月1日掲載=