先週、秋葉原のヨドバシカメラへ行った。現物を見ながら、買い替えのプリンターをどれにするか、決めようと思ったのである。
品定めを始めたわたしはだんだん、商品に詳しい販売員のアドバイスが欲しくなってきた。店員さん来てくれオーラを放つが、誰も近づいてこない。皆さん、大量買いをする外国人客の応対に忙しくて、迷える日本人子羊のお相手をする暇など、ない様子である。
気分転換に、トイレに行く。と、風で手を乾かすジェットタオルに、長い行列ができている。何事?と思ってのぞくと、母親らしき女性が、子供を中国語で怒鳴りつけながら、衣服を送風口に押し込んでいる。足元では、お尻を丸出しにした子供が大泣き。そんなところで、お漏らししたパンツを乾かしているのだった。
そういえば、今冬の銀座でも、アジア人の家族が、年賀状用のサービスとしてポストに備え付けられていた輪ゴムを、ゴッソリ抜き取る姿を、目撃したっけ。
観光客の非常識な行動を大目に見るのは、おもてなし精神の一部であろう。だからこそ、その時のわたしは、別に輪ゴムくらい、まっいいか!と思ったのだった。
同じ視点で考えれば、お漏らしパンツをハンド用のドライヤーで乾かすとか、かわいいものなのかもしれない。
数年前、イタリアのホテルに泊まった時の事。夜遅くまで、中国人らしき観光客が廊下で大騒ぎをしていた。翌朝、わたしはフロントの中年女性に、眠れなかったと愚痴った。すると彼女は「30年前は、あなたたちジャパニーズが、ああだったのよ」と、片言の英語で、笑いながら言った。
異文化へ旅する人のマナーにも、一段一段上っていく大人の階段が、きっと存在するのだろう。
=2015年4月21日掲載=