わたしの家の周辺には、いろんな鳥が生息している。
大きな調整池があるせいか、水鳥も多いようだ。マガモやアオサギ、カイツブリや鵜(う)など……。あざやかな翡翠(ひすい)色に輝くカワセミの姿を、その池の水門辺りで目撃した時はちょっと興奮したりした。
しかし、なんといっても多いのはカラス。アカァ〜アカァ〜という大音量の鳴き声で目覚めることも、しばしばだ。
さて、先日の朝、ランニングに出ようとして玄関のドアを開けると、1羽のカラスと出くわした。電柱の上から、とぼけた顔してこちらを見下ろしている。
ん? と思ってよくよく見ると、くちばしに蛍光オレンジ色のゴルフボールをくわえている。どうしてゴルフボールなんかを? と、首を傾げながら見上げていると、おもむろにそのカラスは飛び去った。
ちょうど同じタイミングでお向かいの奥さんが犬の散歩から帰ってきた。近所では物知りで知られている女性である。そこで、ねえねえと、カラスの様子を報告してみた。すると、「それはゴルフボールじゃなくて、ビワの実よ。近所のお寺の木に実がなると、カラスがこぞって押しかけるのよ」という。
「ビワの実〜??」と、頭の中に?マークが何個も点滅。混乱しながらしばらく走ると、前方の桜の枝にまた、1羽のカラスがとまっているのが見えた。
キョロキョロと、なんだかだれかを待っているようなそぶり。よく見ると、くちばしにオレンジ色のものをくわえている。あれれ、さっきのカラスだ。いいや、違う。仲間のカラスかな?
こちらの訝しげな視線に気づいたのか、カラスは間の抜けたカァ〜という声で鳴いた。とその拍子にわたしの足元にポトッと1つ、ビワの実が落ちてきた。
朝からいったいなんなのだ。カラスの待ち伏せ?
はたまた、恩返し?
=2022年7月22日掲載=