何年か前に、タレントのデーブ・スペクターが「田んぼの横に自販機がある風景こそニッポン」とテレビで語っていて感心した。意外にもデーブ、お調子者のようで、よく見ている。
確かに、広〜い田園の中の一本道にカラフルな自販機がポツンとたたずむ景色は、ありがちにして、なかなかシュールである。
そんな自販機天国のこの国で今、新しい自販機ブームが巻き起こっている。そう思っていたのはわたしだけではないようで、先日、オンライン会議終わりにその話になると、皆、じぶんの家や職場の近くにある自販機を紹介しはじめた。
話に出たのは、本格的なラーメンやサラダ。珍しいところでは、温めるだけの参鶏湯(サムゲタン)、ペットボトルに入ったおだしなど……。コロナ禍になってから、一風変わった食べ物の自販機が、あちこちの街角に出現しているらしい。
なかでも、月島に住んでいるSちゃんの情報は耳を疑った。Sちゃんによると、「家の近くにもんじゃ焼きの自販機があるんですけど、もんじゃの素を買ってきては、ちょくちょく作っています」という。おお、それってすごくない? 「えへへ。小麦粉とだしを溶いた液体の入ったペットボトルと、冷凍具材、ヘラも2本しっかりついてくるんですよ」とのこと。
おそらく、もっともっとわたしの知らないアイデア自販機があちこちに現れているのだろう。
湯煎などで解凍したり、温めたりするだけで通の味が楽しめるのだから、どれもグッドアイデア賞!どの店も、冷凍しても味が落ちないように、苦労して開発しているに違いない。
コロナ禍ゆえの苦し紛れとはいえ、思いがけなくやって来たびっくり自販機ブームは、機械が人間の代わりをする未来への新しい道筋を、うっすらとあぶり出している。
=2022年1月14日掲載=