友人のCちゃんは、5年前、乳がんを患った。幸い、手術も、その後のホルモン療法も、当初の計画通りにうまくいった。今月が、術後丸5年である。
端から見るとあっという間。だが当人には、いのちを愛おしむような日々だったのかもしれない。
先日、彼女の事務所に立ち寄ると、マックを使ってデザインワークをしていたが、手を止めて、「ちょっと、聞いてよ」と、仕事上のよもやま話を始めた。
ふと、デスクを見ると、アイデア帳に鉛筆で可愛いロボットの落書きが…。
「ね、これなぁに?」
「へへ、『ディアゴスティーニ』って、知ってる?」
「創刊号◯百円!の雑誌ね。確か友達の彼氏が安土城を作ってた」と、わたし。
「うん。そこから、今度ロボットが出るんだ。定期購読を申し込んだの」
「うわ!何でまたロボット?」目をパチクリさせて尋ねると、彼女はルンルンと紹介動画を見せてくれた。
名前は「ロビ2」。身長は34㎝、体重は1kg。起きている時、カラダは脈動や呼吸をしているかのように動くのだという。今までのロボットの中でも、とびきり人間っぽい奴らしい。
「靴の色は、大好きなオレンジにするつもりなんだ」
そういうCちゃんは、たくさんの外資系企業の広告デザインの仕事をしてきた。いつだって大忙しのバリキャリ(できるオンナ)である。だが「ロビ2」を語る表情は、今までに見たことがないほど甘くトロけている。
創刊日の夜、Cちゃんにメールをすると、
「朝、出掛けに届いて、今帰宅したところ。これからビールを飲みながら、作り始める!」と気合十分。
病が癒えた友のもとに、やって来てくれた「ロビ2」。Cちゃんは、ドライバー1本で、十月十日(とつきとおか)の倍に当たる80週を掛けて、ロボットにいのちを吹き込み、吹き込みながら元気になっていくのである。
=2017年6月23日掲載=